Top / Research / 2016 / CyberMedicalSystem / VR / WheelChair3dModelMotionAnalysis

下肢3次元モデルを用いた足こぎ車いすの漕ぎ動作特性評価に関する研究

概要

 近年,足こぎ車いす[1]が脳卒中片麻痺患者のリハビリテーション(リハビリ)に,利用され始めている.しかし現在まで,足こぎ車いす走行時の漕ぎ動作特性やリハビリの効果に関する評価などは行われていなかった.そこで先行研究では足の2次元モデルを用いて足が出力するトルクのみを推定し評価する方法を提案した[2,3].これにより足の出力トルクを詳しく評価することが可能となった.しかしこの方法では,一部の脳卒中片麻痺患者に見られる外転運動が生じた場合に足の出力トルクを正しく評価することができない.なぜなら外転運動では,足こぎ車いす走行時に麻痺足が外側に開いて足が3次元の運動を行ってしまうため,足の2次元モデルでは対応できない.加えて,足こぎ車いすを漕ぐ際に外転運動が行われることで,足の各関節にどのような影響を与えるのかについてはまだ評価されていない. そこで本研究では従来の足の2次元モデルを3次元モデルに拡張し,足こぎ車いす走行時における各関節トルクの推定を行った.加えて各関節トルクを用いた,外転や麻痺の程度に関する評価指標を提案し,脳卒中片麻痺患者と健常者による実験を行って評価指標の有効性を確認した.

方法

システムの概要

本研究に用いた計測システムを図1に示す.足こぎ車いすをローラー付き台座に固定することで,得られるトルクが床の材質や路面状況に左右されないような環境とした.またクランク角を測定するためにロータリエンコーダ(E6A2-CWZ3C,オムロン社)を足こぎ車いすの車軸に直接取り付けた.加えて,ペダル角の推定とペダルにかかる力の計測を行うために,3軸の力覚・加速度・ジャイロセンサを内蔵したフォースプレート(M3D-FP-U,テック技販社)をペダル部に取り付けた.さらに下腿部の角度を推定するために3軸の加速度・ジャイロセンサを内蔵している小型慣性センサ(WAA-010,ATR-Promotions社)を被験者の下腿部に装着した.ペダル角と下腿部の角度はそれぞれ,フォースプレートと小型慣性センサの測定値にカルマンフィルタを適用して推定を行った.

Fig1.png
図1 計測システムの概要

足の3次元モデル

本研究で構築した足の3次元モデルを図2に示す.下肢の自由度は合計6自由度として,股関節を3自由度($S_1$-$S_3$),膝関節を1自由度($S_4$),足首関節を2自由度($S_5, S_6$)と定義した.$\alpha, \beta, \gamma, \delta, \theta_a, \theta_e$は各自由度の変化角度である.足の2次元モデルが3自由度であったのに対して6自由度に拡張することで外転運動による角度変化を推定することが可能となった.また足部はペダルに固定されているものと仮定する.これにより$S_1$と$S_6$の変化角度は等しいとみなすことができるため,変化角度を$\theta_a$で統一した.加えて,足こぎ車いすを含めたモデル$^{1)}$と順運動学を用いて股関節位置を原点とした時の足の先端位置を導出することができる.角度θ_aと角度γは小型慣性センサとフォースプレート内の加速度センサにより測定可能な角度であるため,未知角は$\alpha, \beta, \theta_e$のみとなる.これらは下肢のモデルに関する逆運動学を解くことで導出した.また各関節トルクは各自由度の変化角度にニュートン・オイラー法を用いて推定した.

Fig2.png
図2 足の3次元モデル

評価指標

 本研究では各関節トルクを用いて,外転運動の程度と麻痺足の回復度の2つを評価する指標を提案した.まず外転運動の程度を評価する指標であるペダリング効率を提案した.図2よりペダリングに大きく影響を与える自由度は$S_3$から$S_5$である.そこで全自由度の最大関節トルクの総和と自由度S_3からS_5の最大関節トルクとの比をペダリング効率$P_{forward}$として評価を行った.次に麻痺足の回復度を評価する指標であるペダリングトルクの左右差を提案した.本研究ではペダリングに大きく影響を与える自由度$S_3$から$S_5$の関節トルクをペダリングトルクとする.これより麻痺足と健常足のペダリングトルクのRMSをペダリングトルクの左右差${JT}_{diff}$として評価を行った.

片麻痺患者の評価実験

リハビリのために通院している患者10名を対象として実験を行い,漕ぎ動作特性の評価を行った.被験者は健常者4名(男性1名,女性3名)と片麻痺患者6名(男性5名,女性1名)であり,片麻痺患者のBrunnstrom Stage(Brs) は3から5段階であった.被験者にはペダリング負荷を0 Nm,1 Nm,2 Nmと3段階変化させそれぞれ2回ずつ合計6回,バーチャル足こぎ車いすを自由な速度で漕いでもらいデータ測定を行った.実験結果について,歩行に不自由があるが麻痺はない高齢者をN-P群,片麻痺で外転運動のない患者をP群,片麻痺でかつ外転運動を行う患者をP-A群としてそれぞれデータ解析を行った.

実験結果

 各被験者群のP_forward値の比較結果を図3に示す.負荷0 Nmにおいて,N-P群とP-A群,P群とP-A群の間でそれぞれ有意差があった(p<0.05).これはP-A群において外転運動の影響でペダルに効率良く力を加えられていないことを示している.これよりこの評価指標によって外転運動の程度を評価することが可能であることが示唆された.次に各被験者群の${JT}_{diff}$値の比較結果を図4に示す.負荷0 NmにおいてN-P群とP-A群,N-P群とP群の間でそれぞれ有意差があった(p<0.05).これはP群とP-A群における麻痺足が健常足と同程度の力を出力できず,N-P群と比較して左右足のトルクに差が生じてしまったためと考えられる.また各被験者の${JT}_{diff}$値とBrsの関係を図5に示す.図5よりBrsが小さくなるにつれて${JT}_{diff}$値が大きくなる傾向があるということが新たに分かった.この結果から${JT}_{diff}$値によって麻痺足の麻痺の程度を評価できる可能性が示唆された.

Fig3.pngFig4.png
図3 各被験者群のP_forward値の結果図4 各被験者群の${JT}_{diff}$値の結果
Fig5.png
図5 ${JT}_{diff}$値とBrunnstrom Stageとの関係

参考文献・研究業績

参考文献

1) 「足こぎ車いす」に学ぶ医療イノベーションの法則―大学発ベンチャーTESS 快走の秘密を一挙公開―.産学官連携ジャーナル,2012.

2) Aya Kaisumi, Yasuhisa Hirata, and Kazuhiro Kosuge: Assistance control method for one-leg pedaling motion of a cycling wheelchair, IEEE ICRA, 5606 – 5611, 2014.

3) R. Ishikawa, N. Sugita, M. Abe, M. Yoshizawa, K. Seki, Y. Handa: Assessment of motor function in hemiplegic patients using virtual cycling wheelchair, ICDVRAT, 321-4, 2014.

Counter: 1428, today: 1, yesterday: 0
Last-modified: 2016-09-03 (土) 01:16:07 (1166d)

添付ファイル: fileFig5.png 484件 [詳細] fileFig4.png 516件 [詳細] fileFig3.png 471件 [詳細] fileFig2.png 549件 [詳細] fileFig1.png 512件 [詳細]