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補助人工心臓の動的回転数制御下でのセンサレス逆流検出

心拍同期制御の有用性と課題

 補助人工心臓の装着が長期化している背景から,心負荷の低減を目的とした動的な回転数制御方法が注目されています.その中でも心拍同期制御*の適用によって,装着患者の心機能の回復が報告されています1).

 一方で,能動的に回転数を変更することにより発生する課題も存在します.例えば,低回転駆動時には送血した血液が人工心臓を通して逆流するリスクが高まります.逆流は循環補助の効率を低下させるため,特に長期使用の際にはできる限り避けることが望まれます.

インペラ形状に着目した逆流推定

 一般に,回転型の補助人工心臓は内部のインペラ(羽根車)の高速回転によって血液を駆出するため,インペラは血液から反力を受けます.インペラが流れ方向に対して非対称性が強い形状の場合,流量の正負でインペラが流体から受ける作用が異なります.つまり,発生する水力学的負荷が流れ方向によって異なります.そこで,ポンプから得られる消費電流・回転数情報を用いて水力学的負荷を観測することで,流れ方向を推定できる可能性があります.

 この仮定に基づいて,ロータの運動方程式に基づく力学モデルを構築したところ,消費電流および回転数を計測することで,流量に依存するパラメータを間接的に観測できることが分かりました.

オンラインでの逆流検出

 構築した力学モデルから得られる指標を本研究ではBI(Backflow Index)と呼び,さまざまな生体状況および回転数に対するBIの挙動を取得・検討しました.その結果,図1に示すように,ポンプ流量に対するBIの関係はポンプ流量0 L/minにおいてその線形性が崩れることを明らかにしました.同様に図2に示すように,回転数に対するBIは流量の正負で異なる回帰直線状に存在することが分かりました.この結果を基に,BIの非線形特性を利用したオンラインかつセンサレスな逆流検出アルゴリズムを2種類構築しました.アルゴリズム1では,過去のBIに対する現在の拍のBIを比較することで流れ方向を推定します.またアルゴリズム2では,回転数とBIの相関関係を用いて流れ方向を推定することとしました.

 模擬循環回路(モック)2)を用いた循環シミュレーションおよび動物実験(すべての動物実験は東北大学動物実験倫理委員会の審査承認済み)で精度評価を行ったところ,表1のような結果が得られました.この表1より,オンラインかつセンサレスでの逆流検出の可能性が示されました.


図1.png図2.png
図1 ポンプ流量に対するBIの特性図2回転数に対するBIの特性


表1 オンライン逆流検出の精度
表1.png


 以上のように,本研究グループでは長期使用を念頭においた患者のQOL向上を目指す補助人工心臓制御方法の研究を行っています.

参考文献

1) M. Ando, Y. Takewa, T. Nishimura, K. Yamazaki, S. Kyo, M. Ono, T. Tsukiya, T. Mizuno, Y. Taenaka, and E. Tatsumi. A novel counterpulsation mode of rotary left ventricular assist devices can enhance myocardial perfusion. J. Artif. Organs, 14(2011)185.

2) Y. Hirohashi, A. Tanaka, M. Yoshizawa, N. Sugita, M. Abe, T. Kato, H. Miura, Y. Shiraishi, T. Yambe. Sensorless cardiac phase detection for synchronized control of ventricular assist device using nonlinear regression model. J Artif Organs, 19(2016)114.

研究業績

[1]池川 彩夏,田中 明,吉澤 誠,白石 泰之,山家 智之:ポンプ回転数変化時の力学モデルのパラメータ値を利用した逆流検出ポンプ回転数変化時の力学モデルのパラメータ値を利用した逆流検出.第45回 人工心臓と補助循環懇話会学術集会.

[2]池川 彩夏,田中 明,吉澤 誠,白石 泰之,山家 智之:補助人工心臓のポンプパラメータを利用したセンサレス逆流検出.計測自動制御学会 東北支部 第313回研究集会.

[3]池川 彩夏,田中 明,吉澤 誠,白石 泰之,山家 智之:回転型血液ポンプの電流-回転数間のダイナミクスを利用した逆流状態の推定.第44回 人工心臓と補助循環懇話会学術集会.ポスター賞「基礎1」第3位受賞.

[4]池川 彩夏,田中 明,吉澤 誠,白石 泰之,山家 智之:回転型血液ポンプにおける流れの方向による電流-回転数間の動特性の違いと逆流状態の推定.第54回 日本人工臓器学会大会.

[5]池川 彩夏,田中 明,吉澤 誠,白石 泰之,山家 智之:ポンプのモデル式を利用した心拍同期制御下における逆流の検出と解消.第55回 日本人工臓器学会大会.

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Last-modified: 2019-03-20 (水) 15:27:38 (121d)

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