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映像脈波の生成要因に関する研究

概要

 近年,ビデオカメラを用いた生体情報取得手法が注目されている 1).身体を撮影した映像から抽出された脈波情報を反映する信号(映像脈波)は,生理的な要因や測定環境等の様々な要因の影響を受けると考えられている2, 3).本研究では,映像脈波の生成要因と要因別の影響の大きさを調査することを目的とし,特に身体の揺動と皮下の循環動態の変化が映像脈波に与える影響について調査した.

実験方法

 健常な男性5名(平均22.4歳)に対し,表皮の揺動が映像脈波に与える影響を調査する実験(実験1)を行った.実験1の計測環境を図1に示す.実験では,光遮断用クリームを測定部位に塗布し,皮下へ透過する光を遮断して表皮で反射する光の成分のみが身体映像に反映される環境を構築した.光源として白色LEDを用い,測定部位に対して50 cm離れた位置から放射照度5.7 W/m²の光を照射した.また,光遮断用クリームを塗布しない状態でも撮影をして,比較を行った.

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図1 表皮揺動の影響に関する実験の測定環境

さらに,測定部位における皮膚血流量と血圧(局所血圧)の変化が映像脈波に与える影響を調査する実験(実験2)を行った.実験2の計測環境を図2に示す.被験者には,心電図計,レーザードップラー血流計,連続血圧計を装着し,心電図および,測定部位における皮膚血流と局所血圧を測定した.なお,局所血圧の計測は連続血圧計に搭載されている心臓位置センサを解除することによって実現した.

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図2 皮下の循環動態の変化の影響に関する実験の測定環境

まず,男性6名(平均23.5歳)の被験者に対して,上腕部に圧迫帯(カフ)を装着し,0 mmHgから100 mmHgまで1分おきにカフ内圧を20 mmHgずつ上昇させ,その際の映像脈波を計測した.100 mmHgで圧迫して撮影した後,カフを解放してさらに1分間撮影を行った. 次に,男性7名(平均23.2歳) の被験者に対して,心臓と測定部位(掌)の高低差(相対高さ)を変えることで局所血圧を変化させ,その際の映像脈波を測定した.図3で示す通り,被験者には,相対高さが30 cm,20 cm,0 cmの3段階となるように調節された椅子に着座してもらい,1つの状態につき1分間の撮影を行った.

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図3 各相対高さにおける被験者の測定姿勢

解析手法

 解析の流れを図4に示す.実験で得られた映像から,掌の一部を関心領域(ROI)として映像脈波を抽出した.抽出した映像脈波に対しパワースペクトル密度推定を行い,1Hz付近のピーク点を心拍成分強度と定義して,光遮断用クリーム塗布の有無による違いを比較した.

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図4 映像脈波解析の流れ

結果と考察

 表皮揺動の影響に関する実験1について,光遮断用クリーム塗布の有無による心拍成分強度の比較を図5に示す.この結果より,表皮の揺動による成分は,映像脈波の生成要因としてはそれほど大きな影響を与えていないことが確認できた.  皮下の循環動態変化に関する実験2の結果では,皮膚血流量と心拍成分強度とは0.8前後の正相関を示すのに対し,局所血圧と心拍成分強度とは-0.96~-0.05の負相関を示し,相関の値には大きな個人差がみられた.実験で用いた可視光の皮膚透過深度が比較的小さいことと,皮膚表層に存在する静脈の拍動が極めて小さいことを考慮すると,これらの結果は,映像脈波が皮下深部の動脈血管の拍動から表層に伝わる圧変化を強く反映していることを示唆している.また,局所血圧と心拍成分強度の相関値にみられた個人差は,血管の内圧変化による血管容積変化率の個人差と関連していると考えられる.

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図5 光遮断用クリーム塗布の有無による心拍成分強度の比較(実験1)

参考文献

1) M. Poh, D. Mcduff. and R. Picard, Non-contact, automated cardiac pulse measurements using video imaging and blind source separation. J. Optics., 18, (2010) 10762-10774.

2) K. Nakajima, T. Maekawa and H. Miike, Detection of apparent skin motion using optical flow analysis Blood pulsation signal obtained from optical flow sequence. Rev. Sci. Instrum., 68, (1997) 1331-1336.

3) I. Sidorov, R. Romashko, V. Koval, R. Giniatullin and A. Kamshilin, Origin of Infrared Light Modulation in Reflectance-Mode Photoplethysmography. PLoS ONE, 11, (2016) e0165413 1-11.

研究業績

[1] 堀畑友希,吉澤誠,杉田典大: 赤外光カメラを用いた映像脈波に関する研究, 計測自動制御学会東北支部第301回研究集会, 資料番号301-8 岩手大学, 2016年5月.

[2] 堀畑友希,吉澤誠,杉田典大: 赤外光カメラ並びに可視光カメラの映像脈波を用いた血圧推定に関する研究, 第31回生体・生理工学シンポジウム, 資料番号1A-2 大阪国際交流センター, 2016年11月.

[3] 堀畑友希,吉澤誠,杉田典大: 映像脈波の生成機序に関する研究, 計測自動制御学会システム・情報部門学術講演会2017, 資料番号SS12-9 静岡大学, 2017年11月.

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Last-modified: 2019-03-20 (水) 15:39:11 (121d)

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