Top / Research / 2014 / HealthMonitoring / NoncontactSensoring / HRReliabilityPrediction

圧電素子による非接触心拍数変動推定および推定値信頼性評価

概要

 本研究では,シート型微小変位センサを用いて非接触な心拍数変動の計測を行う.シート型微小変位センサは,圧力を加えた際の歪みを,圧電効果によって発生する微小な電圧に変換する素子である.これを椅子の座面に設置することで,心臓の拍動に応じた大腿部をはじめとする身体の微小な振動を計測することが可能となることから,座位における心拍数変動を算出することが可能となる. さらに,日常的な心拍数変動の取得を非接触な測定のみで行う場合,取得した心拍数変動の精度は分からない.したがって,非接触測定によって得られる心拍数変動が信頼できるかどうかを,真値である心電計信号から得られる情報を用いることなくスクリーニングできることが望ましいが,これまでの先行研究では,そのような手法はほとんど確立されていない.そこで本研究では,シート型微小変位センサを椅子の上に設置することで座位における心拍数変動を推定し,かつ推定した心拍数変動を心電計信号から得られる情報を用いることなくスクリーニングする手法を確立することを目的とした.

シート型微小変位センサによる心拍数変動の推定

 図1に,心電計信号,微小変位センサ信号,およびその信号に対してバンドパスフィルタ処理を行った信号をそれぞれ示す.心電計信号中に周期的にみられるピークはR波と呼ばれ,心拍に応じて発生する.そして微小変位センサ信号にもR波と一対一に対応するような振幅の大きい極大値点(以下,特徴点)が存在することが分かる.この特徴点を正確に抽出することができれば高精度な心拍数変動の推定が可能となる.図2に,図1のバンドパスフィルタ処理後の信号から特徴点を決定した例を示す.

fig1.png
図1 心電計信号と,微小変位センサ信号,およびバンドパスフィルタ通過後の信号
fig2.png
図2 バンドパスフィルタ処理後の信号から特徴点を決定した例

推定した心拍数変動のスクリーニング

概要

図2における信号にはアーチファクトがほとんど含まれず,決定すべき特徴点が目視によって判断することが可能である.しかしながら,アーチファクトが混入すればするほど心拍に由来するピークの検出が難しくなり,心拍数変動の推定値が不正確になる.したがって,得られる推定値が信頼できるかどうかを,心電計信号から得られる真値を参照することなくスクリーニングする必要がある.そこで本研究では,以下の2つの指標を,スクリーニング指標として提案する.

nVHF

図3に,心電計信号から得られる真の心拍数変動のパワースペクトル密度(power spectrum density : PSD)を示す.これを見ると,心拍数変動の周波数成分は高々0.4 Hz程度であり,これより高い周波数成分はほとんど存在しないことが分かる.そこで本研究では,心拍数変動に含まれる全パワーのうち,0.4 Hz以上のパワーの割合を,nVHF(normalized very high frequency)として定義し,この値が大きいほど推定精度が低いと考えた.

fig3.png
図3 真の心拍数変動のパワースペクトル密度を算出した例

CVPA

図4に,特徴点の振幅変動が大きい例(a)と小さい例(b)を示す.図4(a)より,体動アーチファクトが少ない微小変位センサ信号の特徴点の振幅値はほぼ一定値をとることが分かる一方で,図4(b)より,微小変位センサに体動アーチファクトが混入すると,特徴点の振幅値が大きく変動することが分かる.そこで本研究では,特徴点の振幅値の変動係数をCVPA(coefficient of variability in peak amplitude)として定義し,この値が大きいほど,微小変位センサ信号に体動アーチファクトが多く含まれ,推定精度が低いと考えた.

(a)
fig4a.png
(b)
fig4b.png
図4 CVPAが小さい例(a)と,大きい例(b).緑色の点線は特徴点の振幅変動を表す.(a)には体動アーチファクトが混入していないのに対し,(b)では43秒目付近に体動アーチファクトが混入していることが分かる.

評価実験

実験方法

安静状態における微小変位センサ信号を測定する実験を行った.被験者には安静座位を保ってもらい,自由呼吸下における5分間の微小変位センサ信号を測定した.さらに,心拍数変動のリファレンスとして心電計信号も同時に測定した.実験は1人の被験者に対して6回行った.被験者は男性22名,女性5名の計27名(23.1±1.0 歳)である(n = 162).

心拍数変動の推定精度の評価

得られる心拍数変動の推定精度は,真の心拍数変動と推定心拍数変動との「ピアソンの積率相関係数」を求めることによって評価を行う.

提案スクリーニング指標の評価

提案スクリーニング指標の評価方法について述べる.正確なスクリーニングが可能となるとき,全データ中における信頼できるとされたデータの割合と,その信頼できるデータ群における平均の推定精度はトレードオフの関係にある.すなわち信頼の基準を厳しくするほど高精度に推定されたデータを抽出できる代わりに,そのデータ数は少なくなる.本研究では,あるスクリーニングの結果信頼できると判定されるデータの割合と,それらのデータの推定精度(真の心拍数変動との相関係数r)の平均値をそれぞれ軸にとったトレードオフ曲線を描き,スクリーニングの正確さを,その曲線下の面積(area under a curve : AUC)によって評価する.

結果

図5(a)に各指標を評価したトレードオフ曲線を示す.ここで曲線ideal は,理想的なスクリーニングが行えた時に得られる曲線を表す.すなわち相関係数r の低いデータから順にデータを除去できた時に得られる曲線を表す.また,信頼できるデータの割合が100 %のときの相関係数r(推定精度)は,データ全体の相関係数を表している.また,図5(b)に,各曲線のAUC値を示す. トレードオフ曲線,およびAUC値から,提案指標を用いて比較的理想的に近いスクリーニングが行えることが分かる.

(a)
fig5a.png
(b)
fig5b.png
図5 各スクリーニング指標のトレードオフ曲線(a)と,各曲線のAUC(b).

参考文献・研究業績

研究業績

[1] シート型微小変位センサを用いた心拍数の推定法; 荻原健,杉田典大,吉澤誠,本間経康,阿部誠,松岡成己,斉藤功一,後藤厚志: 計測自動制御学会東北支部第274回研究集会, 274-5, 2012年7月

[2] シート型微小変位センサを用いた心拍数変動推定法の比較; 荻原健,杉田典大,吉澤誠,本間経康,阿部誠,松岡成己,斉藤功一,後藤厚志: 第46回日本生体医工学会東北支部大会, 2012年11月

[3] シート型微小変位センサを用いた心拍数変動の推定および推定値信頼性評価; 荻原健,杉田典大,吉澤誠,本間経康,阿部誠,小原一誠,松岡成己,斉藤功一,後藤厚志: 生体医工学シンポジウム2013, 2013年9月

[4] シート型微小変位センサを用いて推定した心拍数変動の推定値信頼性評価; 荻原健,杉田典大,吉澤誠,本間経康,阿部誠,小原一誠,松岡成己,斉藤功一,後藤厚志: 生体医工学, 52巻1号,2014

Counter: 982, today: 3, yesterday: 2
Last-modified: 2016-09-03 (土) 01:16:07 (468d)

添付ファイル: filefig5b.png 384件 [詳細] filefig5a.png 462件 [詳細] filefig4b.png 373件 [詳細] filefig4a.png 427件 [詳細] filefig3.png 412件 [詳細] filefig2.png 474件 [詳細] filefig1.png 468件 [詳細]